満月と性欲
満月になるとムラムラする、性欲が高まる、といった話はよく聞きます。
医学的な根拠はないようですが、実際、ツイッター上でも検索すると、満月と性欲の関係性を呟く声は相当あります。
また、以前、俳優の山田孝之さんが、ある番組で冗談交じりに、「満月の夜は悶々として本来の自分ではない自分が出てくる」と語っていたこともあります。
満月の夜になると、まるでもう一人の自分のような、感情や性欲の高ぶりを自分のなかに感じるということがあるのかもしれません。
ミュージシャンでスピッツの草野マサムネさんも、ライブのMCで満月の夜に悶々とする、と語っていたようです。
えー、だいぶ、いい季節になってきましたけれども、なんかこう、ワクワクしたりモンモンとしたりとかしてますか? こうね、春から夏にかけての夜にムズムズムズムズしてる時に、ふと空をみると、満月があったりしてですね、なんかこう、自分のアニマルな部分が残ってると思うと、非常に嬉しい今日この頃なんですけれども。
体感であったり、体験談として発せられる言葉は数多くありますが、果たして、満月の夜と感情や性欲の高ぶりというのは関係するものなのでしょうか。
古くから、ヨーロッパでは、満月の夜には狼になる、という狼男の伝説が存在します。
人狼werewolfといって人間が狼に変身する伝説は、古くギリシア・ローマの時代までさかのぼる。満月の光によって狼に変身し、おもに人の血や肉を求めてさまよい歩くが、夜明けとともに人間に戻る。
この伝説は、満月が、ある種「もう一人の自分」への変身に繋がっていることを表す比喩と言えるでしょう。
他にも、lunaticという言葉は、「狂気」を意味しますが、lunaticの語源は「luna(月)」、すなわち「月」の光によって一時的に正気を失わせた状態を指します。
実際にそうだったのかは分かりませんが、村上春樹さんの小説のなかで、19世紀のイギリスにおいて、lunaticであると認められた場合には、罪の重ささえも軽減された、といった話も登場します。
日本でも、ある地方では、古い慣習に、満月の夜になると既婚者だけが集まって乱交を重ねる、という不思議な行事があったそうです。
「言ってしまうとね、三の倍数の月な。三月、六月、九月、十二月。この月のね、満月の夜になるとさ、村はずれにあるお堂に集まるんだわな。そう、そこいらの男や女が。んでもって、月が見えなくなって、お天道様が昇る頃に終わる、と。そういう行事だね」
制欲の高ぶりの度合いを測定する数値もないので、満月が性欲にどれほどの影響を与えるか、といったことは測りようがありません。ただ、満月や新月など月の満ち欠けが、自律神経に影響を与え、精神や体調が不安定になる、ということは分かってきています。
偏頭痛やめまいだけでなく、イライラしたり、不安になったり、特に繊細で敏感な人ほど、月の満ち欠けの影響も受けやすい傾向にあるようなので、もしかしたら、その満月による精神的な不安定さが、性欲という点にも繋がっているのかもしれません。
女性に質問した、満月の晩になりがち、したくなること、というアンケートでも、体調不良や食欲、睡眠欲の高ぶりとともに、性欲に関しても上位に来ています。
満月によって生じる心身の不安定さや高ぶりなどが、感情の高ぶりや性欲に繋がっている可能性も十分あると言えるでしょう。